妙見山の狐

黒川地区の小方ICの東側に妙見森という小山があります。昔は海上にある小島で、潮の引いた時は「飛渡り」の出来る浅瀬で繋がっていました。

いつの頃かこの妙見森に狐が住み、夜間森の前を通る人に砂を撒いたり、宮島での結婚式に呼ばれた帰りに土産をとられたとか、なかには海に突き落とすといった噂が広がりました。

話によると、ある村人が重箱に「ごっつお(ご馳走)」を入れて大野祭りから帰っていたとき、「飛渡り」にさしかかると気のせいか下げた重箱が重くなったそうです。
「ハァ、これは噂に聞く狐が取りついたか」と思い、重箱を一つ投げてやりました。
それでもまだ重いので、「こんな外道、まだくれと言いやがるんか」とまた重箱を投げて、どうにか家に戻った頃には酔いも醒めていましたが、重箱は無くなっていたそうです。
道に散乱した「ごっつお」を見た者はいましたが、狐の姿を見た人は誰もいなかったそうです。