昔、安芸の三十という男狐と周防のお三という女狐が、弥栄峡の川を挟んで、密かに恋を続け、ついに夫婦となりました。
しかし、間もなく安芸と周防に争いが起こり、周防軍は、白滝山に築城の段取りを始めました。
夫婦狐は、お互いに自分の国の勝利をもたらしたいため、一時は別れ話も出ましたが、夫婦の愛情は断ち切ることはできず、お三狐は思案の末、ついに夫に従い、安芸軍に勝利をもたらすことに決心しました。
いよいよ城の基礎もできあがり、建築寸前となった頃、夫婦狐は、ある小雨の降る夜を利用し、安芸の山の峰から白滝の峰にかけて、提灯や松明を灯した大軍が攻めよせたように化かしました。
周防軍は慌てふためき、白滝の険しい谷間に落ちて全滅したため、ついに城を築くことができず、今なお白滝の頂上には、堀の面影が残っています。