小瀬川の上流域のとある集落で、お金持ちの箱入り娘が皮膚病にかかり、親は色々と手を尽くしましたが、いっこうに良くなりませんでした。
そこに、大竹村の人が商いで寄ったところ、その家の主人から相談を受けました。
「どこかええ薬はあるまいか」
後に引けないのが大竹人の気質で、ワセリンに石灰をいっぱい混ぜて練り回し、蛤の殻に詰めて金箔をはり、自分で適当に作ってしまいました。
少々良心が咎めますが、薬を持って娘の家に向かい、「こりゃあええ薬でよ」と巧みな口上をぶちまけ、高かぁことを言うて売りつけました。
その薬をつけた娘は、みるみるうちに良くなり、皮膚のかさぶたが取れ、治ったといいます。
母親は喜んでわざわざ家を訪ねてやってきました。
本人は、咎めに来たと思い、気付かれないところに逃げていましたが、お礼に来たとわかり、胸をなでおろしたといいます。