牛鬼の話

栗谷町の奥谷尻では、昔から「とんど」が御法度となっています。
とんどを焚くと牛鬼が出てきて暴れるからだとの言い伝えがあるからです。

とんどは左義長(さぎちょう)ともいい、旧暦一月十五日の望(もち)の日の前夜、厄払いの意味も込めて焚かれてきました。
その大切なとんど祭りを禁止させている牛鬼とは、いったいどんな怪物だったのでしょうか。
地獄の獄卒の一人で、牛の頭を持った「牛頭羅刹(ごずらせつ)」からきたのかもしれません。
牛鬼退治の話は、愛媛県宇和島地方を中心に、瀬戸内海の各地に伝わっており、香川県高松市青峯台の牛鬼退治や源頼光の牛鬼退治は有名です。

また、谷和にも牛鬼の話が残っています。
その昔、谷和の人たちが飯谷寄りの下杭(しもくい)本郷に住んでいた頃、牛鬼が里に現れては暴れるので大変困ったそうです。ある日、牛鬼が岩の上で昼寝をしているところを松が飛びかかって退治したと言われています。

本来、牛は優しい動物で、農家では牛を「農宝」といって家屋と同じように大切にしてきました。
凶悪な牛鬼に見立てられたのは、案外イノシシかクマで、暗闇に出くわした際の恐怖によるものかもしれません。
ちなみに仏教では、如来を牛王といい、また、牛は仏様の使いということで特別扱いしてきました。