一区上り組(元町四丁目)では、色々な物品を背負い、商いに出かける人が多くいました。
遠くは錦明路の峠を越え、玖珂・高森方面にまで足を伸ばす人もいましたが、近くでは小瀬川を上り、川手や渋前(しぶくま)あたりまで出かけることが多かったそうです。
あるとき、行商の一人が商いを終えて帰っていると、にわかに暗くなり、雨が降り出しました。
雨は一段とひどくなり、林の中で雨が止むのを待つことにしました。
すると、あたりから「なば(松茸)」の匂いがしてきました。周囲を探しましたがなばは見つからず、気が付くとなばの傘の下に入っていました。
「なんちゅうても、こがいな大けななばは見たことがなぁ」と言ったそうです。