魚切の滝

江戸時代の文政2年(1819年)に編纂された国郡志によると、弥栄峡の魚切では初夏の6月頃、海から産卵のために上ってくる鱒を網で盛んに獲っていたと記されています。

弥栄峡の最北端に、奇岩がそそり立つ絶景の「鳥越の渕」があり、その川下100m位のところに巨大な亀岩が横たわっています。
この亀岩のすぐ下流が魚切の滝でした。長さ二丈五尺(約8m)の岩盤の斜面を流れ落ちる水は、とても勇壮で、白流となって底なしの滝つぼに落ち込んでいたそうです。
上流めがけて上ってきた鱒は、この滝に遮られて転落しており、これに目をつけた両岸の村人たちは、長さ5~7mの竹に大きな網を取付け、落下する鱒をすくいとっていました。

大栗村の名物だったこの鱒漁も、環境の変化にせいか、明治時代を最後に見られなくなりました。また、渕が浅くなったためか、滝らしきものもなくなってしまったそうです。