油見古道を歩く

油見古道
心癒される油見古道

油見の顕徳寺というお寺から登り、右手に歩きはじめると静かなたたずまいの「油見古道」という心癒される古道に差し掛かります。

油見古道は、江戸時代初頭の大竹の海岸線が山裾まであった頃、小方の港や西国街道に出る主要な道でした。
かつては現在の元町方面から繋がっていましたが、近年はその姿がなくなりました。
しかし、近郊でも見られない貴重な古道であり、今もなお生活道として活用されています。

油見古道の白檀
石垣に自生する「白檀」

油見から立戸にかけて昔日をしのばせる見事な石垣は、この山裾の地層の石で築かれている「粘板岩玖珂層群」の石で、いつの時代に築かれたものかはわかりませんが、寸分の狂いもなく時を積み重ねています。
昔はどこの家の石垣にも自生していた「白檀」という多肉植物で、花をつけない時期は決してきれいではありませんが、石垣にしっかり根を張る我慢強い植物です。
現在では生活環境も変わり、コンクリート化されて住むところを追われ、市域でもここだけに見られるようになりました。5月初旬にわずか直径3cmほどの赤い可愛い花を一斉に元気よく咲かせます。

その古道をしばらく歩き、左の山道を登ると「薬師堂」があります。

油見薬師寺(役小角)2
下駄を履いた仏様としては破天荒な役小角の像

油見の薬師寺は、すでに195年前の国郡誌油見村に記載されています。
古くから油見村の人々によって、薬師如来をご本尊として大切にお堂は守られています。また、市域では小方の行者山とここだけに見られる貴重な「役小角(えんのおずめ)」の仏像があります。

「役小角(えんのおずめ)」は、実在の修験僧で、欽明6年(537年)に生まれ、修験道の開祖といわれています。出で立ちも袈裟をかけ頭巾をはおり、高下駄いて履き杖をつく像が多く、油見の薬師堂の仏像もまさにその通りのお姿です。